アニシナベ族 ミシガン サンダンス 日記

2013、アメリカ日記 インディアンとの日々とサンダンス

ミシガン州、グランラピッズ空港に到着。夜11時。
去年お世話になったバウキングドック(以下アンクル)の娘と甥のロンが飛行場まで迎えにきてくれた。今晩はアンクルの娘の家に泊めてくれるらしい。家に着いてゆっくりしていると、突然扉が開いて若い男女が入ってくる。「車に轢かれた!」家主の親友達らしい。大した怪我は無いけれど、皆で大騒ぎ。賑やかなアメリカ一日目。大事無くて本当に良かった。

翌日ロンと共にアンクルの居る街に到着。アンクルはこの地域の部族のチーフの一人でシャーマニズムにも精通している。去年も彼の家に滞在しながらインディアンが扱う薬草や精霊やパイプの事をたくさん教えてくれた。
今年もサンダンスまでの数日間アンクルの家で寝泊まりしながら、森を散策したり、神聖な場所を訪れたり、ミシガン湖に行ったり、して過ごした。
そして毎晩たくさんの話しをした。「インディアンと日本人の精神性」「アメリカ政府について」「インディアンのこれから」「日本のこれから」「様々な国について」「精神世界についてのあらゆる事」「仏教、神道、キリスト教、ユダヤ教、インディアンの教え」「様々な部族に伝わる伝説や予言について」「サンダンスについて」「祈りについて」「愛について」「持たない生き方について」興味深い話題が尽きない。会話の中で多くを教わり、自分も見ている物を伝える。
彼の家はとても小さく、その限られたスペースの中に伝統的で神聖な物がそこら中に置かれている。羽根や動物、伝統的な衣装や絵画や石、弓矢や槍や杖。それ以外の物は本当に少ない。

常にタバコを持ち歩き、山や湖、聖なる樹などに捧げながら祈りながら日常を過ごしている。
「幸せになるのに物は必要ない。」
当然の事だけれど、心を豊かに保ちながら日常で体現している人はそんなに多くない。現在はインディアンの中でさえも。

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サンダンス数日前から会場に行きそこでキャンプを張る。
会場は小さな湖の傍、民家から離れた場所で、木々に囲まれた草原。
この場所を皆でサンダンスグラウンドにしていく。
草を刈って地を均し、丸太を組んでダンスサークルの周りにサポーターの為の日陰を作る。スウェットロッジの準備をして、薪を集める。その他様々な準備をキャンプをしながらしていく。
日を追うごとに人が増え、仕事が進む。

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サンダンス直前、アンクルと話しをする。
俺「今回は出来る限り樹の下で祈り続けたい。」
アンクル「一日目にピアスをして(木の棒を通して)そのまま四日間踊り続けるなら、ずっと樹の下にいる事が出来るよ。」
殆どの人は四日目にピアスをしてそのままちぎる。休憩や寝る時には聖なる樹を中心としたダンスサークルから出なければならない。しかし一日目にピアスをしてロープで木と繋がっていれば、それを引きちぎるまでの間樹の下に留まらなければならない。夜もピアスやロープで繋がったまま眠る。それはイーグルダンスと呼ばれている。
俺「実はその事を考えてたんだ。」
アンクル「お前には出来るし、良い選択かもしれない。」
なぜそれを考えているか彼に話す。感謝や護りたいもの、日本や世界の人々、自然や祖先、歴史の事、未来の事、子供達の事。
俺「よく考えるとしか選択肢が無い。一日目にピアスをして四日間繋がる事にする。」
アンクル「ピアスをすれば途中でやめる事は許されないぞ。」
俺「大丈夫だよ。ありがとう。」
アンクル「サポートするよ。」

去年、四日間繋がっている人はいなかった。ただその話しを何度か聞いた事があった。しかしその話しを聞いた時、自分がやる事にするとは思わなかった。単純にきつ過ぎると思った。自分は昔から血を見るのが得意ではなかったから、去年初めてサンダンスをやる事に決める時にも慎重に心を研ぎ澄ます必要があった。当然痛いのも血を流すのも空腹も乾きも全く好きではない。実際に去年ピアスを刺して引きちぎった時も楽ではなかった。多くの人や物、感謝や愛情に助けられた。
今年自分がこんな事を言っているなんて、その時には夢にも思わなかった。しかし今自分はサンダンスの日を目前にしてこの場所にいてイーグルダンスをすると言っている。それが自分でも不思議だった。

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サンダンスが始まる。
一日目、ピアスをする瞬間。あらゆる感情を同時に感じながら、心は穏やかさを保っていた。感覚の一つとして痛みを感じ、傷の大きさに見合った血液が流れ、時と共に出血が止まる。胸の二カ所に木の棒を刺して、それにダンスグラウンドの中心に立つ聖なる樹から伸びるロープを括り付けてそれを引っ張りながら踊る。

サンダンスが始まると、イーグルダンスをするダンサーが自分も含めて四人になっていた。
パット、このサンダンスのチーフの息子。心も体も強い若者。サンダンスは初めて。
グラスホッパー、二十年近く各地でサンダンスを続けているこの地域の純血のインディアン。
リー、この地域の部族の男性で伝統的な教えを受けてきている。サンダンスは初めて。

この四人はずっと樹の下で共に過ごした。
昼間は強い日差しの中ロープで共に繋がりながら踊り、夜は蚊や夜露の中、樹の下で共に眠る。
彼らともダンスの合間に様々な話しをした。
パットは自分と似た考えを持っていて共感し合う所がとても多い。自分は日本人で日本から世界を考えて、彼はインディアンで、彼の部族から世界を考えている。多くの人を笑顔にしたい。子供達にとっていい未来を渡したい。そんな事が共通している。今まで経験してきた事もにた事がたくさんある。
俺「今年はヨーロッパ、アフリカ、中東、アジアを周るよ。」
パット「俺も行くよ。仕事やめて、持ってるもの全部売ればなんとか行ける。」
俺「いい旅になるな。」
パット「そっちは着物だから俺はインディアンの伝統的衣装で行くよ。」
俺「ははは。楽しみだ!」
旅の仲間が出来た。お互いに信用出来る事は文字通り痛いほど分ってる。

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樹の下の四人 右からリー、パット、グラスホッパー

サポーターの皆がいるおかげで、踊り続ける事が出来る。ダンサーの一人一人がそこにいるだけでお互いの強さになる。そして四日間共に繋がった三人と心で強く繋がった。その全てに感謝が尽きない

このサンダンスには多くの国々から人々がダンスに参加したり、サポートしに来ている。その一人一人が自然や世界中の人々の事を真剣に考えて何か出来る事をしている人ばかりだ。そんな人々に会える機会は本当に有り難い。
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ルーマニア、アルゼンチンからの人々。th_IMG_6714
アンクルとその家族、兄妹達。

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日本からもダンサーやサポーターが数人来ている。その彼らも一人一人が素敵な人で、明らかにこの地域の部族や他国の人から特に尊敬を受けている。

四日間の間断食断水をしながら、乾きに気を失う事もあった。しかし、周りの人の助けで踊り続ける事が出来た。
サンダンスの終わりにピアスをちぎる。樹に手と頭をつけて祈りを捧げては樹からはなれる。それを四度行ってその終わりに樹から走って離れて、その勢いで身を切る。ピアスが弾け飛び、鋭い痛みが体に走ると共に体が地面に投げ出される。
感謝が込み上げる。産まれた事、産んでくれた事、美しい世界、あらゆる人との出会い。全ての恵み。

サンダンスが終わった後には食事会が待っている。
共に踊った家族、サポートしてくれた家族との楽しい食事。
水も食事もやはり格別で、ありがたいと言う気持ちでいっぱいになる。

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サンダンスのチーフ「これからNY行くんだって?足はまだ無いんだろ?俺が車で送って行くよ!丁度行ってみたかったんだ!俺はまだ一度もNY行った事が無いんだよ。最高に楽しいドライブになる!俺とパットと息子達とで送って行くよ!」
俺「本当に?ありがとう!!!」
俺はもうすぐNYからスペインに飛ぶ事になっている。

サンダンスの後、数日間パットの家に泊まりながら出来る手伝いをして過ごす。ヨーロッパから参加してる人たちとドライブやバーベキューをしたりワークショップをしたりして過ごす。

NYに向かう当日、朝7時頃に家を出て16時間、二日間のドライブ。皆でわいわい騒ぎながら、車を走らせる。インディアンの歌を教えてもらったり、これから先どんな風に協力し合えるかについて話し合ったりしながらNYに到着。
宿などはいざとなれば野宿でも良いし、着いてから決めるつもりで特に考えていなかったけれど、NY在住の友人が泊めてくれる事になった。本当にありがたい。
一緒に自由の女神を見に行って、泊めてくれる友人の家に送ってもらう。
俺「この恩は返し様の無いほどだけれど、必要な時にはあなたの孫は必ず護ります。」
チーフ「お前がそうする事は知ってるよ。良い旅を!」
パット「一ヶ月で金貯めてヨーロッパで合流だな。待ち切れないよ。」
俺「皆ありがとう。元気で!」

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翌日、去年セドナで会ったNY在住の仲間達に再会。皆それぞれこの地で力強く生きている素敵な人たち。忙しい中殆どの人が集まってくれた。本当に良い夜だった。またの再開を誓ってお別れ。

今日の夜、スペインに向けて発つ。
今の所、何もかも未定。
人も土地も良い出会いがきっとある。
ヨーロッパ初上陸。
楽しみだ!!

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