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日本を歩く道のりは、
一生のように長く、一晩のように短かった。

脚は疲労で軋み、
足の裏には水ぶくれができ、
草履の鼻緒で皮が剥がれ、
踏み出す一歩は焼けるよう。
日焼けで顔がむくみ、目が開かなくなった。
癒しであるはずの温泉は、滲みて全身に激痛が走る。

袋に細い紐がついたバックを背負い、
肩は青あざで覆われ、
筋肉の張りは限界に達して悲鳴をあげる。
偏った荷重のせいで、
腰と背骨が痛み出す。
それを軽減しようと、腰に紐を巻いて重さを分散すると、
神経が圧迫されて、左半身に電撃のような痺れと痛みがでる。

蓄積した疲労で足の甲と踵が痛み、
2km歩くたびに休憩しなければ耐えられないほどになる。
しかし、立ち止まると、
アブにたかられ、思うように休めない。
歯を食いしばって歩き続けると、
疲労骨折になっている。

資金のなさに食事は最小限。
みるみる体重が減って行く。

台風の峠越えでは、
ずぶ濡れになりながら、一人暗い山道を進み、
バス停や、公衆トイレや、高架下で眠った。
しかし、時にその場をも追い出される。
居場所がない。
居場所を失った獣の気持ちを知った気がして胸が痛む。
山を奪われ、追いやられ、自分が眠る権利がある場所もない。

クマを恐れて気を巡らし、
歩道のない道で、
車に轢かれないように神経を張り詰める。

冬になると、
テントが凍り、
眠れない夜は体力を奪う。

風呂も洗濯も川ですることもある。
服は破け、
カバンはちぎれ、
鼻緒が切れる。

人と話すこともできずに、
ひたすら歩き続ける日も多い。

どこまでいっても、
道は彼方まで続いている。

しかし、
それら全てが、素晴らしい学びだった。

苦しいなどと思う間もないほどに、
幸せな旅だった。

愛する故郷を、
一歩一歩踏みしめて、挨拶をする。
そうして感じるもの。
空気の香り。
土地土地の、美しい自然の彩り。
日本の木々や、鳥の声。
鹿や狐や猪の姿。

友達や、その友達、
出会ったばかりの人が、
温かく迎え入れてくれて、泊めてくれた。
懐かしい話や、
未だ見ぬ物語を交わしながら、
酌み交わす一杯は最高だった。

新しい人々との出会いは、
たくさんの恵みをもたらしてくれた。
その土地の歴史を教わり、
その人を介して、その土地を身近に感じられる。
知らなかった土地が、また帰りたい場所になる。

人生のあらゆる時期の友達に再会することもできた。
幼少期を共に過ごした友達
大学で一緒にバカやった友達
一緒に命がけで海に出たヨット部の仲間
ニュージーランドで会った旅仲間
バナナ農場の兄弟たち
ダイビングを教えていた頃の生徒
中東や南米、アメリカで会った旅人
日本で様々な活動をする中で出会った同志
講演に呼んでくれた想いを共にする同志

こんなに幸せなことがあるだろうか。
自分の人生を訪ねる旅でもあった。

いつも、旅や人生が豊かだったのは、
全て、出会った人のお陰だった。

自分は、世界や日本のことを考える。
分不相応の大きいことをしたいわけじゃない。

ただ、
世界中、日本中に、
命の恩人がいる。
愛する家族がいる。
恩返しがしたい。
笑顔が見たい。

それだけだ。

毎日歩きながら、
見渡せる一番遠くの峠を目指してきた。
一日も歩けば、その峠にたどり着き、
そこから新しい景色が広がっていた。
いつの間にか、目指していた場所は通り過ぎ、
そこには、次の峠が彼方に待っている。

そんな日々。

今ここに立って、
見えるのは、
終わりではなく、始まり。

この景色を胸に焼き付けて、
また進みだそう。

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今回の旅で、
これまでの人生で、
出会ってくださった皆さん、

歩ききれたのは、
全て皆さんのお陰です!
本当にありがとうございました!

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