小雨の滴る農道。
左右に折り重なる畑。
遠くの山々は靄にかすんでいる。

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「伊藤さーん!ヨット部です!」

幻聴だろうか。
振り返ると、満員の車の窓から叫んでいる後輩がいる。

「お〜!!」

大学のヨット部。
熱い日々の思い出が甦る。

全力で何かに打ち込みたいと思って始め、
いつの間にか、海が生活の中心になっていた。
弱小チームと言われた歴史を塗りかえようと、
必死で練習を重ねた。
オリンピックチームの監督に、
「本気でやれば日本で数本の指に入る」
と言ってもらえるまでになった。

ヨットで生きていくことも頭をよぎったけれど、
環境問題の道に進もうと、卒業後は日本を出ることを決意した。
同時に、ヨットでは自分という個人ではなくチームに賭けようと、部長になった。

大学が休みの日は、
朝4時にサーフィンに行って波の感覚を覚え、
部員が集まる前に、一年生の朝練を見て、
練習はは夜まで続き、反省会は深夜に及んだ。

毎朝、寝不足で疲労困憊の体を起き上がらせて、
躍動させるものが海にはあった。

他の大学がやっていなかった、冬の練習も解禁した。
厳寒の落水は命に関わる。
雪のちらつく海でずぶ濡れで数時間。
かじかんで力の入らない手で握る舵は凍って滑り、
ロープも徐々に固まってゆく。
後にも先にも、あれほど寒かった経験はない。

命を削るような練習の日々。
そうまでして勝ちたかった。

最後の夏、成績は上がり、弱小チームではなくなったものの、
優勝には至らなかった。

悔いはなかった。
ほんのわずかも手を抜かなかったから。

自然を相手にするスポーツは楽しかった。
海は圧倒的大きさで人間を包み込む。
どれほどの力で向かって行っても、
海はビクともしない。
そんな圧倒的な存在に、
自分の全てをぶつけ切るのは楽しかった。

そして、横にはいつも、同じように自らを研ぎ続けるライバルがいた。

大学を卒業して、海外に出て数年後、
母校が北海道初優勝を果たしたと連絡があった。
自分が部長だった時に朝練を見た一年生の世代だった。
わずかな貢献だったけれど、心の底から嬉しかった。

それからさらに数年が経って、
もう部には当時を共に過ごした部員はいない。
しかし、それでも声をかけてくれたのが涙が出そうなほど嬉しかった。

「facebookで見てました!日本縦断頑張ってください!」

自分はあの頃から、
今も、答えのない道を進み続けている。
何を成せるかは分からない。
しかし、全身全霊打ち込んだ日々と、
その時に横にいた仲間の思い出は一生の宝になる。

今はこの一歩を大切に。
この歩幅の積み重ねが、
日本列島の途方もない距離になってゆくのだ。

「今度練習見に行くわ!」

振り返って、
また歩き始める。

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夜には、偶然に別の知り合いに出会い、
泊めていただきました。
本当にありがとうございました。

現在、長万部!
今日は晴天!
来月頭に函館に着くのが目標!!

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