桂林 中国

『真の国防 中国の優しさ』

伊藤研人 着物 中国 桂林

中国・桂林。
誰も英語を話さない。
それでも宿屋では主人が筆談で一生懸命伝えてくれる。
翌日には携帯電話の翻訳ソフトをダウンロードしてくれている。

桂林の美しい山水の風景。
たまたま船に乗り合わせた家族が、昼食でテーブルに招いてくれて、ごちそうしてくれた。
小さい女の子は無邪気でやんちゃで可愛らしい。
純粋に、守りたいと思った。

バスで近くに座った女性がみかんをくれた。
誰とも話す事すら出来ない土地。
優しさが心に沁みる。

中国では反日教育が行われていると言う話を聞く。
二年前の反日デモは記憶に新しい。
毎日、抗日ドラマと言う、日本を悪役にしたドラマが放送される。

中国政府がチベット、ウイグル、そして近隣諸国にしている事を見れば、楽観視する事は出来ない。
日本に対して悪感情を持つ人もいる。
しかしそれは政府であり、民衆ではない。
一部であって、全体ではない。

日本が原子力発電所の問題を抱えている事を理由に、海外の人々から日本の人々は全員、自然を愛さない無責任で危険な思想の持ち主だと決めつけられたらどんな気持ちになるだろうか。
確かに反論出来ない。
我々には止められなかった。
しかし、やはりそれだけが真実ではない。

中国人の友達が教えてくれた。
「中国の人々は海外の人には表面上優しくする。
でも、本当はお金の事ばかり考えて、愛情で行動しない人ばかりだよ。」
「抗日ドラマや授業で日本を悪い国だと思った事もあるけれど、日本のアニメを観て何かが違うと思った。今では日本が大好きだよ。」

正直言って、中国を着物を着て旅する事は少し恐かった。
治安の悪いアフリカとは違う種類の恐さだった。
反日感情があると思っていたし、言葉も通じない。
しかし、行ってみれば人々の優しさや、家族愛を見せられた。
それは世界中のどこで見た光景とも同じ物だった。
反日感情を抑えての、表面上の優しさも皆無ではないかも知れない。
けれど、絶対にそれだけじゃない。

今、中国の台頭に備えて軍備を増強するという流れを感じる。
確かに、ただ平和を信じてチベットやウイグルを直視せずに、十分な軍備はいらないと言うのは甘いと思う。
しかし、軍事力で国を守れるとは思えない。

本当の戦いになれば、今の時代勝者は無い。
100年前とは違う。
人口10倍以上の中国相手に、20年後、30年後に勝ち目など無い。
勝ち負け以前に、全人類を窮地に陥れる事になる。
抑止力が必要なのは分る。
しかしその効力も、長くは続かない。

最悪のシナリオを考える。
万が一中国が反日感情を抱えたまま、20年後、30年後に世界的な主導権を握って、歴史を改ざんして、日本を国際社会の中で悪者にして、従わせようとしたら、どうなるだろうか。
嘘だろうとなんだろうと、世界は強い物に従わざるを得ない。
歴史からも、現在の世界情勢からも明らかな事だ。
その頃は、もはや軍事力でも敵わない。

そんな時に必要なのは、国民一人一人がしっかりと日本の国際的立ち位置や、多角的視点から見た歴史を認識して、世界中に真実を冷静に訴え続けてきたという事実だ。
本当に物を言うのは軍事力ではなく、教育、そして真に優れた人材。
国を守る事を目的に軍事力を増強すれば、それだけに頼り、しがみつく人が出てくる。
軍事力はあくまで一時しのぎの抑止力として使いながら、国民一人一人にはっきりと認識させるべきだ。
「軍事力では国は守れない。友好を目指す強い心と、それを達成する為の広い知識と優れた技術が必要」だと。

しかし、この最悪の事態が起きてからでは遅い。

中国の田舎で毎日、抗日ドラマを見て日本人に一度も会った事がない人たちは、きっと日本に反感を持つ可能性も高い。
日本人だって、そうだ。
一度も中国人と話してないのに、イメージで嫌う人もいる。
しかし、会えば分る。
愛情を持った人なんだと。
子どもを見れば思う。
何人だろうと、この子を守りたいと。

真の国防はここにあるのではないか。
ただお互いに真実を知らせる事。
日本人の大半が恐ろしく冷徹な民族で、いますぐ中国に攻め入るなんて真実じゃない。
中国人は皆日本人を嫌っていて、日本を乗っ取ろうとしているなんて真実じゃない。
プロパガンダは強い。
しかし、真実にはそれに十分対抗出来る強さがある。
真実ほど、食い止めるのが難しい物は無い。
我々民衆が真の姿を通して心を通わせたら、政府も企業も戦争は起こせなくなる。

我々一人一人の行動から、世界中との友好の種を蒔いて行く。
それが唯一の国防の方法ではないだろうか。

ただ無関心で盲目的に平和を信じても未来は無い。
軍事力に物を言わせようとしても、一時しのぎにしかならない。
一人一人が、意識して世界に目を向けて行動する意外道はない。
先に恐れを乗り越えて、先に許して、理にかなった平和の道を歩むしかない。

日本の人々には、それが出来ると信じている。
日本を何とも思わずに、6年前に日本を出て、世界中を回ってきた今、はっきりと感じる。
日本が世界に先駆けてそれを実践出来ると。

日本だけが出来る訳ではない。
世界中で、同じ事を目指している人々がいる。
だからといって、人任せに出来る訳が無い。
我々は、我々がやると言う気概を持って、しかし誰も侮らず、まず日本人同士で手を取り合いたい。
敵ではなく、仲間として、健全な議論を重ねて行きたい。
それが出来れば、日本は世界に先駆けて実践出来る。

日本の子どもたち、
中国の子どもたち、
世界の子どもたちが、共に笑顔で暮らせる世界を夢見て。

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