マサイ族 ケニア

『マサイの戦士 対 日本人』

マサイ 着物

マサイの村
「よく来たな。どこから来た?」
「日本だよ。よろしく。」
「そうか、ちょっと一緒に飛んでみろ。」

一緒に飛ぼうなんて誘われたのはおそらく人生で初めて。
飛んでみると楽しくなってくる。
終わると、マサイの戦士たちにじろじろ体を見られて、その中の一人が木の棒を渡してくる。
そして、彼が持っている木の棒を両手で力強く持って無言で突き出してくる。
この目つきは明らかに何かを挑まれている。
自分の持っている棒を当てると全力の押し合いになる。
数十秒、ほぼ同じ力で押し合って、最終的になんとか押し勝つ。
ライオンを倒した人間と力比べが出来るなんて光栄な事だ。

マサイの男たちが盛り上がる中、別の男が前に出て手を差し出してくる。
この目は確実に何かを挑んできている。
その手を取ると、いきなり空中腕相撲が始まる。
こっちも、もう火がついている。
こんな感覚は久々。
挑まれたからには負けられない。

これも本能で、遊びの産みの親の一つなのだろう。
明らかに人類共通。
特に男に。
一部の女性からしたら、もしかすると無意味に見えるかもしれない。
しかし、長い歴史に形作られた本能はやはりあるのだろう。
例外はもちろんたくさんあるが、野生動物だった頃は、力で競い合いパートナーを得ていた。
約25万年前にホモサピエンスになってからも、つい2、3万年前までは、ほとんど男がチームで狩りに出ていた。その時にもスポーツ的要素があったに違いないと思う。
未だに人はスポーツで熱くなる。
つい、誰が一番強いかなんて事をやってみたくなる。
これが悪い形でこじれると戦争の一つの原因にもなる。
しかし、スポーツを通して友情が生まれ、心と体の健康を保つ助けにもなる。

左手で勝つと。
少し驚いて右手を差し出してくる。
二人同時に一気に全力を込める。
完全に互角。
体が絡み合い、ぐるぐる回る。
勝負がつかないまま終わった。
彼が口を開く。
「ちょっと腕見せてみろ。」
見せると。笑う。
「ははは!お前は強かったよ、日本人。名前はなんていうんだ。」
いつの間にか意気投合。
「また来いよ。」
「来年また来るよ。その時に勝負を付けよう。」

その後、族長の息子がマサイ族の文化について多くを教えてくれた。

マサイの戦士は雄のライオンを倒さなければ男と認められて妻をもつ事は出来ないらしい。
しかし、食料を得る為の狩りは野生動物との調和を壊さない為に頻繁にはしないと言う。
主な食事は家畜の血とミルク。
ほとんど一日一食で生活すると言う。

遊牧民である彼らはヨーロッパの植民地政策を始め、近代化の波に飲まれて土地を次々に奪われた。
そして現在住む土地の多くは国立公園に指定され、様々な規制に縛られて生きている。
かつてのように自由な移動や狩りは、国境や動物保護の為の法に縛られている。

かつてアフリカの外から来た人々が、利益目当てに動物を乱獲し、野生動物の減少した。
それを理由に、その土地で何万年も生きて来た人々がその生活スタイルを規制される。

この村も、観光客を受け入れ、現金を得る。
真にかつてと同じ暮らしではない。
しかし、土で造った家で、電気も使わず、昔ながらの食料を食べ、伝統衣装を着ている。
時代の変化に押されながらも、マサイとして生きる道を模索している。
そんな彼らは無邪気で、本当の笑顔に溢れている。
これは、実際に心と心で触れ合わなければ分らない。

かつて植民地主義が押し寄せた頃、他の部族がそれに協力する中、抵抗し続けて追いやられたマサイ族の誇り。その残り火を見せられている気がする。

辺りを見渡せば、遥かな地平線にライオンやキリンや象がそこら中にいる。
そして、マサイの赤い服が小さく強い存在感を放っている。
彼らの笑顔が、この野生動物の楽園でこれからも続く事を切に願う。

今、我々日本人の生活はどうか。
心はどうか。
遥か日本に想いを馳せる。

ここにマサイ族がいて、日本人がいる。
出逢って、互いの文化を教え合って、同じ事に熱くなり、笑い合った。
この時代。
まだ、マサイの魂は生きている。
まだ、日本の魂は生きている。

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