カトマンズ ネパール

ネパールで居候 日本とネパールの青い芝

ネパール 和服

ネパール・カトマンズに到着。
町を歩いているとたくさんの人が話しかけてくる。
魂のこもらない、ただの音を投げかけてくる無数の色の無い客引きに混じって、一人色の在る人が話しかけてくる。
「日本人かい?僕は日本に住んでいた事があるんだ。久々に日本の人と話がしたいな。お茶でもどう?」

普通は警戒すべき所。
睡眠薬強盗なんてのもある。
ただ、目を見て大丈夫だと感じる。
この直感が外れるとしたら、それはそれでいい勉強だ。
「いいよ!少し話そう。」

しばらく話し込んで意気投合。
「家に泊まって行けよ!お金は要らないよ。ネパールの伝統料理を食べて行けよ!」
「ありがとう。是非!」

こうして、ネパールの一般家庭に居候させてもらう事になった。
ここで1週間お世話になる中で色々なものを見せてもらった。
ただ、観光するだけではネパールを誤解していた部分も多々あったと思う。

まず、この土地は一日数時間しか電気が通らない。
夜に電気がつくと皆一部屋に集まってテレビに釘付けになる。
しかし、電気が無い間は、ロウソクの明かりで暮らす。
その分、家族同士での会話も多くなる。
ロウソクの明かりも好きだ。
夜やる事が無く、はやく寝るので、早起きな人が非常に多い。

水も手こぎポンプで汲み上げる。
洗濯も体を洗うのもこれをつかう。

家族は本当に自然体で笑顔が素敵だ。
その分日本人的な視点からの驚きもある。
人の履物を平気で踏んで歩くとか。
家の中でつばを吐くとか。
わざとではないけれど、一度自分の下駄の上につばを吐かれて驚いた。
ゴミを部屋の中に捨てたり、衛生環境がとにかく劣悪だったり。
子どもだけでなく、母親までもがこういった振る舞いをする事に日本人としては驚きを隠せない。
良い悪いじゃない。
物理的にも精神的にも『外』と『内・家』の区別があまりないように思う。

良い悪いじゃないけれど、
日本が長い年月をかけて築き上げて来た『文化』と言う物の重みを痛感する。
それを文字通り「有り難い」と大切に扱って恩恵を感じていれば、日々の生活に幸福をもたらす美しい宝になってくれる。そこには細やかな心遣いが込められた先人の知恵がある。
しかし、「当たり前」と面倒くさそうに形だけ取り繕えば、ただ制限をもたらす習慣の足かせになってしまう。その意味や心を感じなければただの煩わしい時間の無駄になる。

日々を息子とトレッキングに行ったり、娘と祭りを見に行ったり、赤ちゃんと遊んだり、お礼に食材を買って来て料理をしたりする。
みんな素朴で温かい。
子ども達は外で楽しそうに遊び、大人達も力を抜いて笑顔で暮らしている。
しかし、それも一面。

この家の長男はいつも大声で冗談を言って笑っている。
一見明るくて楽しそうに振る舞っている。
しかし、なんだか心が感じられない。
そんな彼と祭りの夜に二人で話しをした。
家の中で焚き火をして、年に一度のシバの祭りの日にだけ許される喫煙をしている。
長男「俺が何を考えてるか知ってるか?俺はお前が俺を不思議そうに見ていたのを知ってる。」
自分「ああ、なんで心にも無い事を叫んで笑ってるのか不思議に思ってたよ。」
長男「そうか。俺は悲しくて仕方が無いんだ。冗談言ってへらへらして笑ってないと立っていられない。大声で笑い飛ばさないと悲しみが胸につかえて生きていられないんだよ。」
自分「やっぱりそうか。そうだと思ってたよ。同じ目をした強い男を知ってたから。なにがあったんだ。」
長男「この国には仕事が無い。だから俺は海外に出稼ぎに行かなければならない。今までも6年間海外で働いたよ。またもうすぐ出発だ。けど何年も息子や家族と離れるのは辛い事だ。家族への仕送りの為だけに一人海外でで過ごす時間は楽じゃない。そうやって一生懸命働いても僅かな稼ぎにしかならない。俺は学校にも行って無いし将来の事も不安ばかりさ。」
自分「そうやって出稼ぎに行く人は多いのか?」
長男「ほとんどだよ。」

正直驚いた。ほとんどだとは知らなかった。

長男「こっちでは一日働いても100円〜400円程度しか貰えなかったりする。これじゃあ生活なんて出来ないよ。日本はどうなんだ。」
自分「日本は一日働けば8000円にはなる。人は仕事が無いって言ってるけど、アルバイトとかも含めれば大抵仕事は見つかる。それで生活する事は出来る。」

明らかに驚いた表情を見せる。
長男「一日8000円?本気か?考えられない。日本で働けたらと願うけど、ビザがおりないな。」

ネパールに来る前に、インターネットで情報を集めたりする中で、ネパールに行った人々の感想の中でよく見かけた言葉がある。
「人々は笑顔で幸せそうに暮らす。」
「今の日本では見られないような子ども達の笑顔がある。」
といった言葉。
本当にその通りだ。
しかし、彼らは言う。
「ネパールは本当に貧しい。政治家は汚職にまみれて成すべき事を成さない。海外からの援助も自分のポケットに入れてしまう。格差は大きく、豊かな人は貧しい人をかえり見ようとはしない。水道から水は出ず、毎日停電になる。教育もままならない。家賃さえもなかなか払えない。日本は素晴らしい国だ。なんでも揃ってる。給料も格段にいい。日本に行きたいよ。」

どちらがいいのだろうか。
答えなど無い。
日本の抱える問題を彼に話すと複雑そうな顔をしていた。
学歴社会、自殺率、ストレス、などなど。
どこの国にもそれぞれの問題がある。
何かを得るという事は、何かを失う事。
何かを失うという事は、何かを得る事。
結局は全てが同じ事。

また別のネパール人と話していると、こんな事を言っていた。
「日本は素晴らしいと思うし、行ってみたいとも思う。だけど俺は日本人のように働く事はできない。ここではみんな仕事も笑ってリラックスしてやる。俺はここで幸せだよ。」

昔オーストラリア人と話していた時の事を思い出す。
自分「オーストラリアでは皆、若いうちに自立して自分で選択した道を生きていてすごいね。皆、自信を持って堂々と生きてる。」
オーストラリア人「日本人は本当にすごいよ。ほとんどの人が高等な教育を一生懸命受けてる。素晴らしい社会システムだよ。」

どこでも同じだ。
隣の芝はあおく見える。
無い物ねだり。

きっと、ここに気づいて初めてスタートラインに立てる。
人から学ぶ事は大切。
けれど、人を羨んだり、自分の現状を呪ったりする必要は全くない。
どこにでも、いかなる状況でも、メリット、デメリットは必ずある。
それを受け入れて、現状をありのままに見て、今この瞬間に足るを知り、幸せを感じる事が重要だ。
足りないものではなく、持っているものに目を向けなければならない。
その上で、より良いものを夢見て道程を楽しみながら進んで行くべきなのだろう。

自分に出来る事は何か。
日本に産まれた幸せは何か。
日本が国として向かうべき方向はどちらなのか。
この和の中で自分はどんな流れでいられるのか。

日本の皆さんと考えて行きたい。
世界中の友達と考えて行きたい。

こうして言葉が届く幸せを感じながら。
ありがとう。

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