ジュネーヴ 科学について

CERN 欧州原子核研究機構 科学の遊び

CERN

CERN研究所を見学して来た。
スイス、ジュネーブの郊外、フランスと国境をまたいでいる。
地中につくられた巨大な加速器を使って粒子同士をぶつけて、ビックバン直後の宇宙の状態を再現する事によって様々な研究を行う施設。
数年前、ここでブラックホールがつくられて地球が消滅するという噂が流れ、youtubeでも地球がCERNでつくられたブラックホールに飲み込まれて消え去る動画が載せられたりしていた事は記憶に新しい。

この施設では実際にヒッグス粒子や反物質と思われる物が観測されている。
幼い頃から科学が好きで、理系の道を進んだ自分としては憧れた場所の一つ。

ヒッグス粒子は、元々質量の無かった粒子に質量を与えた存在。
反物質は、普通の物質から逆の電荷を持つ物質で、これが相関する普通の物質に当たると、この物質も反物質も消滅してしまうという面白い代物。

幸運にも、まさに粒子をぶつけてその様子を観測をする装置を見る事が出来た。
普段は公開していないけれど、この日は特別なイベントがあったため、入る事が出来た。

巨大な実験装置。直径15m、長さ21.5m。更に驚くべきはその重さはエッフェル塔の約二倍だそうだ。

もちろんここでは世界中から選りすぐられた優秀な頭脳の持ち主が研究をしている。
しかし、雰囲気は巨大なおもちゃで遊ぶ子供だ。
これは悪い意味ではない。新しい未知のおもちゃを与えられた子供はワクワクして目が輝く。
ここでは人類規模で未知な物を扱う、人類の最先端の技術を集めて作られた人類最高峰のおもちゃ。
彼らの笑顔や、実験が成功したときの興奮はそういった雰囲気がある。仕事としてではなく、やりたいからやっている。

科学は元々そんな物。遊びだ。
日々の生活に直接役立つために行う事ではない。
純粋に「知りたい」というだけの事。
しかし子供の遊びと同じ様に、遊びから学びを得て、その学びが将来思わぬ形で非常に役に立つ事もある。

「知りたい」という点では哲学者も同じだが、方法が違う。
科学は石橋を叩いて渡る様に、石の一つ一つを証明しながらでないと進めない。
哲学者は橋を叩かずに進んで行こうとする。

科学は、証明出来た事については信憑性が高いが、その速度は遅く、説明出来ない事が世の中に溢れている。元々は証明出来なかった事を新しい理論を見つけて説明する為の物なのに、現段階では信憑性が低い新しい理論を唱えれば気違い扱いされるという不思議な風潮もうまれている。

しかし近年、科学と思想家の間柄で面白い事がいくつかある。
例えば、ブッダはかつて「全ては変化を繰り返して存在する。」「あらゆる物は最小の点まで突き詰めると振動になる。」という発言をしたと言う。
これはまさに近年科学で唱えられている超紐理論と驚くほど合致する。
ただひたすらに自分の感覚を極限まで研ぎ澄まして観察した結果、その後2000年以上の歳月を費やした人類の辿り着いた理論と同じ物を見たのだろうか。
それは分らない。
ただ、非常に興味深い。

他にも自然数の法則やフィボナッチ数列などは面白い段階に来ている。
数学、物理学、量子力学、遺伝子工学、などなどきりがないほどの種類の学問が総合的に組み合わされながら研究せざるをえない時代に差し掛かってきた来た。

科学は好きだ。
単純に面白い。
しかし、それは遊びだ。
もしかしたら、副産物的に役に立つ場面があるかもしれない遊び。
そしてその能力もたかが知れている。
それを盲信し、唯一信じるべき物と勘違いし始めれば、その人にとっての科学は一宗教に成り下がる。楽しい遊びが常識的な現象に落ちる。

今回この施設を見学出来て本当に楽しかった。
ただ、大きな力を伴う遊びは楽しいだけでは済まされない。
遊びに力が伴うなら、それなりの責任もはっきりさせなければならない。
科学者が研究だけに没頭していても許される時代は原子爆弾が落とされた時に終わりを告げたはずだ。
人類が安全に遊びながら成長できる事を願う。

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