心

2008年02月27日19:27
孤独な悪魔はいつも一人
人の知らないことを知っていた
人にできないことをすることができた
悪魔には知恵の力があった

人は悪魔を頼る
悪魔はそれに応える
知恵の力で代償を得る
人は力がないから気付かない
悪魔はずる賢くそれを得る

人は悪魔に憧れた

でも
人は幸せだった
知らずに
できずに
知恵がない
生きることが
幸せだった

空を空だと信じていた
山を山だと信じていた
海を海だと信じていた
愛を愛だと信じていた

本当の音を聞き
本当の景色を見
本当の心に触れた
生きた言葉を産み出せた

悪魔は孤独でからっぽだった

空を空だと信じない
山を山だと信じない
海を海だと信じない
愛を愛だと信じない

知恵の力がある悪魔には信じることができない

聞こえる音は
音ではなく
理由と振動

見える景色は
景色ではなく
結果と情報

触れる心は
心ではなく
理と虚空

産み出す言葉に魂はない

人は知らずに憧れた

悪魔は人に知恵を与えた
孤独な悪魔は
寂しかった
自分だけが持つ知恵の虚しさに耐えられなかった
人は悪魔になった
感覚を見失い
生きる意味が必要になった

今はもう見分けがつかない
悪魔は人になりたかった

2008年03月23日18:08
真っ白な服を

柔らかい風になびかせて

セピアの回廊を歩く

木枠のキャンパスを流れる
砂と雲
色味はないが暖かい

体を溶かし
心に奏でる
優しい音楽
美しさと懐かしさに
自分を忘れる

セピアの回廊
ゆっくり歩くそのむこう
揺らいで霞む煙のように
最古の友の
声が囁く

2008年03月21日11:20
麗しき森には謎

いつでも隠し事がある

誰に対して隠すわけでもなく

その秘密は森を森とし

美しさの一部

優しさ妖しさ厳しさ冷たさを一つにし

森は秘密の世界を守る

朝露が葉から地面に落ちる間にも
光の当たらぬ一枚の落ち葉の下にも
無数の秘密が隠れている

美しき森に

人が抱くのは

光と闇

闇にはいれば

恐れ
怖れ
畏れ

そして嫌う秘密

秘密が解らぬ人に
焼き殺される
麗しき森

解らぬなら消してしまえと
切り殺される
美しき森

森はただ
秘密を守り
美しさと共に
消えるだけ

そうして人は
どんどん殺して
住みよい平地に
解るもの

そうして人は
心の森も
殺してゆく

森はなにも言わずに
秘密を守る

ただ美しくある

2008年03月16日18:26
かつて奴隷は叫んだ

自由を

自由をください

何物にも縛られない
一切の責任がない
自由を

奇跡によって願いが叶い
彼は自由になった

何物にも縛られない
一切の責任ももたない

彼には

自由が最も大切だった

自由のために

あらゆる物を拒み

多くの事を我慢した

多くの時間を費やした

そして誰よりも自由だった

彼は
願った通りの人生の終わりに

こう呟いた

私がほしかったのは
自由ではなかったのかもしれない

自由になってしたかったのは
違う何かに縛られること

自由になってしたかったのは
再び不自由になること

なんの奴隷になるか
自分で主人を選ぶこと

私がなりたかったのは
自由の奴隷じゃなかった

もちろん
金の奴隷や
力の奴隷なんかじゃない

今思えば
私は

幸せの奴隷になりたかったのだと思う

最も自由で最も不自由であった男は
そう言って眠った

2008年03月11日14:37
神は完全なものを創らない

神は完全なものが大嫌い

神は
彼の
お父さんも
おじいさんも

先祖のすべてを

完全なものに奪われた

完全なものは

完全であるために

すべてを必要とし

古の神々はすべてを与えた

完全なものは
すべてを満たさなければならなかった
そうでなければ完全ではない

美しくなければならない
醜くなければならない

明るくなければならない
暗くなければならない

穏やかでなければならない
激しくなければならない

すべてを満たすことを求め
代々の神々は与えた

すべてが存在しなければならない
何一つ存在してはならない

何かでいてはならない
何かを選択してはならない
すべてでいなくてはならない

木々が
川が
海が
鳥が
星が
宇宙が
神々が

それでいることを
完全なものは許さない

完全であるために

そうして完全なものは
完全なものになった

すべてを備えた
何もかもで満たされた世界

そこは

すべてがあるがゆえに

何一つ無い世界になった
それが完全な世界だった

違う世界から帰った神は驚いた

そこには
すべてがあり
何一つない

神は完全なものを嫌い
それに

『無』

と名付けた

そしてその上に
不完全な『有』をたくさん創り
不完全な神の好きなようにした

木々は
育み燃える

海は
与えて奪う

月は
満ちて欠ける

命は
生まれて死んでゆく

人は
愛して憎む

それを美しいと思うから
そういう『有』をたくさん創った

神は完全なものが大嫌い
この世界の下にいくつも重なる
完全なもの

過去
無限に繰り返される
『無』と『有』の連鎖

いずれこの世界も
新たな『無』が産み出され
完全なものに
なるかもしれない

だけど
不完全な神は
完全なものが大嫌い

2008年03月10日13:36
いつも見ているのは

それではない

私はここにあるものを見ようとしていないのかもしれない

いつも見たいものを目の奥に浮かべている

もっとも遠く

もっとも近く

何を見たいのかはわからない

ただ

視線はいつもこの世界の外へ

見たことのない懐かしいものへ

美しいものにその名残を求めて

荒野に咲く一輪の花

大空を旋回する孤独なコンドル

水面に写る月の光

崖をしたたる一滴の雫

美しく輝く砂漠の砂の一粒

そんなものが

私の視線を

この場所から遠ざける

そんなものの一つになりたいと

静かな音で

願わせる

2008年03月03日10:30
記憶の香りが漂うと

優しい景色がよみがえる

鼓動がその時奏でた旋律を
もう一度響かせる

暖かさに心が溶けて
その瞬間の色になる

涙が汚れを持ち出してくれるから

あの瞬間
暖かい光景が
輝いて

とても美しく

とても懐かしく

優しい音楽のように
包んでくれる

空気を握ろうとするように
それはするりとすり抜けるから

ありがとう

手を振りながら

また会えることを祈る

戻らぬ過去

優しい香りが

いつかきっと

会わせてくれる

だから安心して

今を生きよう

ありがとう

さようなら

2008年04月24日09:59
君が体を離れた日

胸がざわめかなかったのは
美しい君を
忘れる日など来ないと
体のすべてが感じたから

君が呼吸に飽きた日

涙がでなかったのは
ずっと仲良しでいられると
あらゆるものが囁いて
信じさせてくれたから

君の温もりは
この手に残る

君の優しさは
心に生きる

君の代わりに
世界を見よう

君の代わりに
人を愛そう

流れるこの涙は

君に対する感謝の証

あの日に我慢していたものではないから

望まなくても

綺麗だと眺めてほしい

おやすみ
輝く宝石

2008年04月26日23:23
人々の肩には小さな悪魔

《得した方がいいぜ
自分のものが多くないとあいつみたいに死んじまう》

悪魔は自分の食べ物の名は
絶対に口にしない

《旨いだろ

楽だろ

楽しいだろ》

人間が気付いて
悪魔に与えなくなれば
悪魔は死んでしまうから

《やらなきゃやられる
みんなやってることだよ》

悪魔の仕事は
食べたものが
なぜなくなったのか
気付かせないこと

《あいつや子孫が損しても
お前の人生には関係ねぇ》

必死で囁き続ける

《お前は勝ったから人より偉いんだ》

欲望を駆り立てて
目をそらさせる

《大事なのは
地位だ
名誉だ
金だ
土地だ
女だ
見た目だ
武力だ
権力だ》

複雑にして
忘れさせる

《多いほど嬉しい
そうだろう?》

甘い言葉で
目を眩ませる

《すべてがほしいとは思わないか》

たった一つの大切なもの

《いい話があるからちょっと聞けよ》

人は
なぜそれが手元にないのか
気付けない

《もっともっと
手に入れろ》

物足りない
まだ足りない
ほしい
ほしい
満たされない
きっとまだまだ足りないからだ

《勝ち取れ蹴落とせ
あいつの分まで多く獲れ》

悪魔は残さず
きれいに食べるから

《お前は賢い》

悪魔よ
教えておくれ
私は何を求めているか

《とにかく求めろ手に入れろ
いずれ必ず満たされる》

耳を貸せば貸すほどに
悪魔に与える
大切なもの

《お前のほしいものは知ってるよ》

その名は絶対口にしない

《生きる意味を教えてやるよ》

人間の最も大切なものを糧にして
親身に囁く悪魔は笑う

2008年04月14日09:53
足に勇気が宿るなら
しゃがみこんだその場から
次の一歩を踏み出せよう

その目に勇気が宿るなら
恐れて俯く視線を上げて
広がる世界を捉えよう

腕に勇気が宿るなら
大切なものを抱きしめて
その身を呈して守れよう

口に勇気が宿るなら
あらゆる人を前にして
心のままに語れよう

背伸びして
力を借りる
勇気から

そうして少し
強くなる

心に
愛が宿ったなら
不安と迷いが消え去って
全てを自然に行えよう

全身に真理を纏い

背伸びや力は
必要ない

強さや弱さも
関係ない

心のままに
愛のままに
なされることが

勇気と名付けられるだろう

名前がついた愛の子は
人に力を貸し続ける

2008年04月09日14:55
奪われて
傷つけられて
彼の頬は涙に濡れた

私は尋ねる
なぜ抵抗しないかと

私から流れるこの涙
愛する人を想うゆえ
病に曇った彼らの目
不毛に動く彼らの手

なにも見えず頑なに
力を持った幼子が
苦しみの海に浸かってる

その理由すら解らずに
心に流れる涙も忘れ
持ってしまった力のままに
自分と人から奪い取る

自分の事しか考えない
自分の幸せすら理解しない
心を凍らせる伝染病
愛を忘れる病人たち

この涙
彼らのために流すもの
皆に幸せがないならば
私の幸せは訪れない

彼はそう言って
今日も奪われ
傷つけられて

愛すべき
病人のため

祈りを捧げ
涙を流す

もう言葉は必要ない
祈る人が増えただけ

2008年04月04日08:24
空を見て

雲を心につかまえる

内側で

少しずつ形を変える

くすぐったくて懐かしい

気持ちがいいけれど

今の自分は

雲をこね回せるほど

無邪気ではないから

少し感じたら

逃がしてしまおう

あまり空を晴らさないよう

すぐには行かないで

叶うなら

ゆっくりとお別れを

さようなら

2008年05月28日09:42
石の壁に触れながら
廊下を進む
足を前に出しているかは
どの瞬間にも思い出せない
けれど確かに進んでいる
きっと歩いている

飾られていた花は
ロウソクになった
右手にはいつも
石の感触
左手には手袋

天井はどうなっているのか
見る気はない
きっと高くて美しい

一つの部屋
広くて質素な部屋
何も祀られてはいないけれど
そこは教会
少年が膝をついて
祈りを捧げるその先には
星が描かれたステンドグラス
何を祈るのかは
きっと誰も知らない
目の見えない少年は
表情を変えずに祈り続ける

今まで見てきた部屋のように
ここもすぐに忘れるだろう

ただ
ステンドグラスの星は
石の感触に似ている

その事だけは
忘れないでいるかもしれない

触れている間
手にあの星を
感じるようになったから

2008年05月27日17:33
磐に触れ

その冷たさに

地の深さ

思いを向ける

声を聞き

その響きに

あなたの心

染み渡る

2008年05月23日09:29
私はあなたにただ語ろう

いつ立ち去っても構わない

私は話す

見てきたものを
感じたものを
私の心に浸透させて

心をそのまま口から出そう

私の感じる
美を愛を願いを
この音に乗せて

ただ語ろう

そうして私は
あなたの心を
そっと眺める

友が輪を描くこの場所で
火を囲んで互いの心を

いつ立ち去っても構わない
いつここに来ても構わない
常にあなたを尊敬している

私はここで

語っていよう

2008年05月20日17:40
ゆっくりとこぼれ落ちる雫
波紋が
静かに広がってゆく

日の光が零れる
大木を見上げた時

風の囁きを聞きながら
駆け抜けるそれを見送る時

生きた大地の鼓動が
自分の足に響く時

小さく弱い一輪の花が
優しく見つめてくれる時

雫はそこに
零れて落ちる

音が
仕事を忘れた場所
時に温かく
時に冷たく
波紋は広がって
ゆっくりと
水面は表情を変えてゆく

ほんの少しだけ
水面が高くなった事に
それはまだ
気付いていない

2008年05月16日00:16
友人よ

世界の果て

私は見てきた

音と光の終わり

そこは確かに

この世の果てであった

しかし

そこから一歩

踏み出そうとすると

世界の果ては

一歩下がり

その時世界は

一歩広くなったのだ

2008年05月09日02:54
それは深い霧の夜

星は隠れ

風は迷って立ち止まる

木々は眠ったふりをする

何かを怖れるように

少年は振り向いて目を細める

灯台だけ

霧の向こうにあるのが分かる

その目の美しさは

涙をためていた頃のまま

丘をくだって歩いてゆく

それは深い霧の夜

もう灯台も

孤独を怖れて霧の中

2008年05月01日10:54
一面の
白い大地
紅く光る無数の目が
夜空から哀しみを跳ね返す

孤独な汽車は
煙を吐きながら
明けない朝の方角へ

一度も変わったことのない
硝子のキャンパスに
カーテンをかけて
目を閉じる

音も闇も
ゆっくり小さくなってゆく

目を開ける
眠ったのか
分からない

記憶はない

質素で美しい
落ち着いた内装も

椅子の上の
私と似た形のものも

記憶は甦らなくても
きっと変わらずそこにあった

黒い布を引いて
その中で眠っていた外を見る

暗い空には
無数の紅い光の雫

白い大地が
我々は変わらないと
また囁く

動かずに頷いて
外が眠れるように
黒い布をかける

淡いランプの光
穏やかに揺れて
影を追い回す

影が逃げる度に
動いてはいない
私と似たものの
表情が変化する

笑顔を作ったつもりで

また目を閉じる

紅い光が一つだけ
空から大地を
見るのをやめて
そこにはもう
居なくなったことに

私も大地も

また気付かない

2008年07月31日02:27
もしも鳥が

飛ばなければ

寿命が倍になると

神様に言われたら

それでもきっと

鳥は飛ぶ

2008年07月04日10:58
カンカンカン

ここは高級ネジ工場

ネジの品質は世界一

やわらかく融かされて

みんな同じ型に入れられて

ハンマーで叩かれる

高級ネジは

何年も何年も叩かれる

真っ直ぐに

更に固く

決して曲がらないよう

そうして出来たネジたちは

巨大な機械の部品になる

それがネジの誇り

巨大な機械にねじ込まれ

固く締めて動かない

何年も何年も

それが高級さの証明

ある時

叩いても叩いても

真っ直ぐにならないネジがいた

彼は考えていた


ネジの形をしているけれど

融かされて型に入れられる前はネジじゃなかった

なら今だって形はネジでも

ネジではなくて

たまたまネジの型に入れられた物質とも考えられる

ネジはネジになりたくなかった

外の世界を知りはしないが

少なくとも大きな機械は嫌いだった

彼は少し曲がった形の方が美しく思えたけれど

叩かれるのは大嫌いだった

それに

棄てられるのも

また融かされるのも

絶対に嫌だった

彼は真っ直ぐになったフリをした

何年も何年も

叩かれすぎないよう

真っ直ぐに見せかけた

そして商品になった日

彼と同じ箱に詰められたネジたちは

希望に満ちていた

あんな大きな機械に使われるんだ

取り替えられないように

しっかりと締め続けるぞ

それが彼らの誇りだった

流石は高級品と言われることが

最大の喜びだった

しかし

彼だけは違った

周りのネジが期待に胸を膨らませている頃

彼は箱の中で何年も待ち続けたチャンスをうかがっていた

::::::::
彼は今浜辺に佇んでいる

元の通りの少し曲がったネジの形で

外に出てから見たものは

忘れていた懐かしいもので溢れていた

その中で特にこの場所が好きだった

彼はそこで

彼であるようにいることにした

夕日の浜辺に曲がったネジは

懐かしいその場所で

彼であるように佇んでいた

海は海であるように

砂は砂であるように

木は木であるように

岩は岩であるように

ただそこにいた

そんな風にするのが

ただ

好きだった

ただ

好きだった

2008年08月20日07:32
失うことを恐れるな

それは当然失われる

失うことを恐れるな

守るべきなら守られる

失うことを恐れるな

失うことを失うな

2008年09月27日07:47
満月の夜

薄明かりの中

扉を開けると

優しい風が体を撫でる

穏やかにきしむ床

裸足で甲板を歩いてゆく

夜に影を作り出す満月は

何も考えていないように振る舞っている

少し目を合わせて

表情を変えず

黒い海へ飛び降りる

音も衝撃もあったかどうかわからない

上を向いたまま

底へ引き寄せられてゆく

気泡たちは名残惜しそうに

ゆらゆら水面へのぼってゆく

それを眺めながら

深く深くおりてゆく

フワリと背中が地について

気付けば周りに水はなく

一面光の砂の海

星の砂漠の光のかけら

そっとすくって手にとると

風にさらわれ駆けてゆく

明るく輝く砂たちに

安心してまた倒れこむ

光の砂が舞い上がるなか

目を閉じて消えてゆく

光の砂の感触を
その手に残して
また船の中で
目を開ける

2008年09月26日18:02
そこには少年がいて
『死んでもいい?』
と言いながら泣いている

そこには青年がいて
『何か関係がある?』
と言いながら浮いている

そこには大人がいて
『ここにいる』
と言いながら目を閉じている

そこには老人がいて
『ありがとう』
と言いながら終わりを見ている

2008年09月09日09:30
おじいさん、どうしてみんな死んじゃうの

少し休んでまた生きるためさ
太陽さえ、そうしているだろう

おじいさん、どうして木は生えてくるの

大地は生きていて、木はその一部なんだよ
人間だってそうさ

おじいさん、どうして人はケンカするの

忘れたからさ
自分と人は一つだということも
自分は大地の一部だということも
お前の体を見てごらん、手が足を欲しがったり、指が耳を憎んで傷付けたり、そんなことはしないだろう
本当は人間も隣で人が餓えに苦しんでいたら、自分だけ食べても幸せにはなれないものだ
けれど人は、それも忘れようとしているんだよ

私はお前を傷つけない
共に大地の一部で一つだと感じるから

おじいさん、僕も思い出したよ

2008年09月08日08:35
乾いた雨の音のなか

孤独を望んでいると知る

話さないでいるほど言葉は生まれ

沈黙は自分に戻す

2008年10月27日23:31
目を閉じて

深く

深く

感じる

サラサラと

音と一緒に

自分の中へ

染みてゆく

ゆっくりと

音も消えて

暗くもなく

明るくもない

そのなかへ

自分の声を

聴きにゆく

2008年10月23日11:57
薄暗い夕方に
薄暗い部屋の中
古びた本を眺める
視界が虚ろになってゆく

パラパラ
パラパラ

ザワザワ
ザワザワ

森の中の細い階段
風に枝は傾き
木々は一本ずつ覗き込んでくる
無数の囁きの中を登ってゆく

ガサッガサッ
ガサッガサッ

パチッパチッ
パチッパチッ

炎の下で薪が文句を言っている
三日月が照らす砂の世界
炎と煙を眺めながら
彼の話を聞いている
鍋の中身が煮えてきた

ポコッポコッ
ポコッポコッ

ポツンポツン
ポツンポツン

無数の滴の音の中
屋根から滴る滴の音
水の世界で座り込んで
その音の中にポツン
水溜まりを手で叩く

パシャッパシャッ
パシャッパシャッ

パタ パタ
パタ パタ

柔らかい朝焼けが
カーテンをなびかせる
ベージュの部屋にベージュの光
風が古びた本を読んでいる

パラパラ

パラパラ

2008年10月22日12:20
暗く緩く渦を巻く

その不安はきっと

産み出したものではなく

入ってきたものでもない

気付かぬうちに閉じ込めたもの

鍵を見つけて開いたら

感じるままに放してやって

いずれ何処かへ飛んでゆく

2008年10月18日13:31
真理は光

追い付けるものではない

追えば追うだけ

考えれば考えるだけ

けれど光は相手にしない

周りより速くても

周りより考えても

真理の前では

平等に静止

平等に無知

光を追うは

闇に迷う

ありがとう

光の美しさ

光の温かさ

まだ感じられる

2008年10月10日12:33
いつも一番優しい声で語るのは

風と仲のいい大木

長い時を知りながら

余計なことは語らずに

あるままにそこにある

ゆっくりと
少しずつ
わきあがるように
無数に
まっすぐに
包むように
突き抜けるように

とても優しく
語ってくれる

最も古い感謝を
思い出させてくれる

いつの日か
そんな風になるために

今は
風になっていよう

2008年12月18日12:32
人間は
光の粉を持っている

それは心で作られて
笑った顔で外に出る

ほら
あの人が微笑むと
ふわっと光が包むよう

微笑みで見つめれば
光の川はその人へ

見つめ合うのは
少しだけ眩しいけれど
糸のように流れ合う

光の粉は
いつも嬉しそうにキラキラと

自然と笑顔になれるのは
光の粉が
外の世界を見たがるから

ほら
感じるだろう

胸の奥が温かくなると
光の粉が作られる

笑顔になって
からだの外へ染みだして
ゆっくりまわりをただよっている

あの人のまわりにも

感じるだろう

温かい人々に
光の粉が溢れてる

心を凝らして見てみると

ほら

木々からも

鳥からも

君からも

世界は光で溢れてる

2009年01月22日11:13
明日の仕事が憂鬱?
いいじゃあないか。

来年の景気が心配?
いいじゃあないか。

将来の生活が心配?
いいじゃあないか。

いつかくる死が怖い?
いいじゃあないか。

温暖化による人類滅亡が心配?
いいじゃあないか。

君は
君で
体で
心で
記憶で
分子で
原子で
何でもない

最初からあったもの
最初はなかったもの

その一つで
その集合で
そのすべて
その中の無

人類が滅んでも
地球が粉砕しても
宇宙が消滅しても
有なる物が無になでられても

それはそうあるようになっていて
ただのそれ

正常な状態
異常な状態
砂粒の中の
確率ゲーム

当てはまるものは
何もない

全てはそうなるように
ただそうあるように

こんな世界で
君は君

僕が本当に聞きたいのは
君である君が
何を恐れるのか
何を求めるのか
どんな命を生きるのか
どんな死を待っているのか

なんでもない
そんなこと

2009年01月20日10:08
寒さに雪が生まれるように

綺麗な白の悲しみが

風に揺られて降り積もる

暖かさを感じた場所を

白く冷たく覆い隠す

美しさも暖かさも

今は全て雪の下

冷たい白が広がる世界

雪解け水の潤いに

命の開花を待ちながら

冷たい毛布にくるまれて

冷え過ぎぬよう心は眠る

2009年01月12日16:25
暑くもなく
寒くもない

サラ サラ

私はここにいるのだろうか

太陽は砂の隠す地平へ身を横たえる

限りなく広がるようで丸く小さくも見える砂漠と空

何も感じないことが懐かしい
けれど私は存在するのだろうか

思い出すという作業の手順を
なにかを覚える方法を
きっと思い出せないのだろう

それなら私は誰

なぜ思い出せないのだということを理解しているのだろう

なぜ私自身が何も思考できないということを意識できるのか

疑問は長く留まらない
疑問と確信はあぶくのように近づいては消えてゆく
確かに『今』は記憶に残らないのだろう

ああ

綺麗

貴方は誰

温かい

おやすみ。

ありがとう。

彼女はいつか眠りから覚めるのだろうか
病室の窓から見える夕日はなんでも知っているような目をしている
その光は彼女の頬を鼻や口元を浮かび上がらせる
そっと髪に触れる
少しだけ目が空いたような気がした
胸を刺す痛みがあるわけではないのに
不意に涙が零れ落ちる
ごめん
指でそっと拭き取って
きつく抱き締めたいという衝動を突き放しながら
頭を撫でて
今日もまたさよならを言う

おやすみ。

いい夢を。

ありがとう
背中に聞いた気がして振り返る
口は動かなくても
確かに言ったのだろう
彼女なら必ずそう言うのだから
事実とは関係なく
確信してもいいのだろう

2009年01月04日05:22
この世界を作っているのは誰だい

君が好きならいいけれど

僕ならそんな世界は作らない

グレーだけでは気が滅入る

ピンクだけでは眠れない

グリーンだけではスリルがない

朝日と共に目が覚めて

月明かりにまた目を閉じるまで

この世界を作るのは君

適当に作ってしまう日もあった

うまく作れない日もあった

けれどそんな日々が

本当の君に気付かせる

どんな世界を作りたいのか

一日をどんな色で描くべきなのか

君の好きな世界をイメージさせる

そろそろイメージできるはず

本当は君自身が知っている

一万枚の嫌いな絵を描くよりは

一枚の大好きな絵を描いてほしい

また今日も世界を描くのは君だから

ここで僕が願うのは

好きな絵を描く君が

笑顔で生きていますように

笑顔で描いていますように

2009年02月27日20:56
あはは

わっはっはっは

くすくす

なに言ってんだよ

はっはっは

なんで泣いてるんだよ

あっははは

なんで笑ってんだよ

かっかっかっか

ふふふ

お前誰だよ

はっはっはっは

なんでもいいよ

もっと火の傍にこいよ

わっはっはっは

2009年02月03日03:33
果てしなく続く道

一歩

また一歩

始まりは覚えていない

歩く理由はわからない

必要なのかということも

草原のざわめきから風は現れて

頬をかすめて走り抜ける

追った目線の先では
雲をゆっくりと運んでいる

雲の隙間から光が射しながら

大きな影は草原を駆け抜ける

道の先は見えやしない

ただふと足元に咲く小さな花が

足を次の一歩に駆り立てる

風と草原の囁きに誘われて

一歩は自然と歩みになる

影は駆け抜けて消えてゆく

風は撫でて走り去る

小さな花は
可愛らしく揺れている

今この道を
歩んでいる

2009年02月01日00:24
本当は
どんな思いを心に満たしながら
眠りに揺られたかったのだろう

本当は
どんな表情で空の無限を眺めながら
家路を辿りたかったのだろう

本当は
どんなものに感謝を感じ
どんなものを美しく思い
どんな正義を愛しているのだろう

もしも
心にこびりついたものをすべて
剥がしてしまうと
そこには何が残るのか

どうか忘れないでいてほしい
どうか思い出してみてほしい
どうか大切にしていてほしい

2010年01月29日21:51
信じられたら

目を閉じる

ほら

手の平を暖める

両の頬を撫でている

見えないけれど感じるもの

どこにいても

樹々の歌を聴かせてくれる

人々の祈りを光にして見せてくれる

信じながら

目を閉じる

ほら

感じられる

世界は愛に満ちている

2010年10月04日18:42
コツン

コツン

扉の向こうから
足音がちかづいてくる

色のない部屋
家具にも
窓の外にも
命のない色

いつからここにいるのか
そんなことにも
興味が向かない

コツン

コツン

萎れた花の刺さった花瓶
人を座らせたくなさそうなソファ
霧に満ちた窓の外

壁に貼り付けられたメモ
「君はかつて色を見た」
「君はかつて愛の中に」
「いつでもここに帰っておいで」
「ただ信じて目を閉じて」

コツン

コツン

何も感じることができなくても
かつてあった物が
今はないのだと解る

ガチャ

ギィ

足音が止んで扉が開く
薄暗い扉の外
真っ白なワンピースの少女
悲しそうな微笑みで見上げながら
口を動かしている

「あなたはこの部屋から出て行く」
「あなたがその手に握っているものを私にちょうだい」

何を握っているのか
知ってはいけないような気がして
床に零れる少女の涙を目で追いながら
扉の外へ歩いてゆく

コツン

コツン

手に何かを握り締めていることを忘れて
意識はどこにも向かずに
ゆっくり廊下を歩いてゆく

白いワンピースに身を包んで
色のない世界を
色のない微笑を浮かべて

コツン

コツン

2010年12月19日20:59
ねぇ

何を求めて旅をするの。

見渡す限りの地平線
草原が風を奏でる場所
少女が立っている
白い肌に力強く何物にも囚われない目
スカートと髪の毛を風がなでてゆく

ねぇ

夢と現実に違いはあるの。

汚れた靴は青年の体の一部
健康で強靭な体はどんな場所も乗り越えた
ほしいものはすべて手に入ると信じる手は
光を掴む機会を逃すまいと時を待つ

ねぇ

目を閉じればどんなものでも見られるよ。

草原が歌う
少女は目を閉じて
風を手に乗せる

ほら

私はどこにも居なくてどこにでもいける。

探し続ける青年の目は
閉じられることは無い
知性を秘めて信念を纏う
その口は開かれない

ねぇ

あなたはもうすべてもっている。

目を開けた少女の眼差しは
冷たく優しい
微笑には
光と闇が隠れている

ねぇ

死んでいても生きていても同じじゃない。

遠い山の頂を見据える青年の目は
揺れることがない
その頂に立った時に何が見えるのか
想像もしない

ねぇ

あなたはもうもってるよ。

日の光は黄金色で世界を包む
少女は目を閉じて風に溶ける
青年は草原を掻き分けてゆく

ねぇ

始まりは終わりで終わりは始まり。

2011年01月10日17:56
嵐の混乱の中に
すべてを見失っても
夜の闇がいたずらに
裏切りの冷たさを打ち付けても
自分の場所で自分を取り戻す

新しい時に夜明けは美しく
赤みがかった雲が歌いだす

涙の時間を過ごしたら
光のほうに顔を上げて
すべてに笑いながら歩いて行く

それほど自分は小さくて
それほど自分は滑稽で
それほど人生は楽しいもの

この終わりある音楽の中で
愛するものにどれだけのものを与えられるか
どれほどの感謝と一つになれるか

先の見えないこの道で
笑顔でゆっくり目を開けて
忘れてはいけないものを内側に感じながら
また一歩を踏み出してゆく

2011年01月15日16:47
私は

空に漂う雲だった

草原を吹き抜ける風だった

草木を抱きしめる大地だった

雪原を走る狼だった

嵐に落ちる一筋の光だった

旅人を乗せる船だった

砂漠を舞う一粒の砂だった

空の青を背負う鷲だった

夜の涙を隠す雨粒だった

時間と語る亀だった

孤独に光る星だった

命を育む海だった

小鳥を休ませる大木だった

音楽を溶かす一杯のコーヒーだった

冷たく沈黙する岩だった

この世界だった

あらゆるものが
永遠に存在するものが
無限に細分化されるエネルギーが
循環の中でここに集まる
私の体を構成して
また流れて行く

私はかつて
存在するものすべてだった

私は今
これらのすべてで

わたしはこれから
永遠にすべてに流れ込む

時間の中で
すべてのものが
私の心を描き出す

流れ込んでは
流れ出す

私は体

私は心

私は世界

私はあなた

私は私

すべては一つ
愛情がすべてを包む

私はただの世界

私はただの私

2011年04月08日07:59
葉が落ちる

自由に舞い落ちる

その一瞬

その葉は永遠に舞い続ける

その永遠は一瞬で消えてゆく

ヒラヒラと舞いながら

光を浴びて

影を落とし

短い永遠を終えてゆく

樹から離れ

土に還るまでのその間

一期一会の風の中

どんな風に舞い踊り

どんな風にこの一生を終えようか

どんな風に一つの無限を感じようか

また風に

ひらりひらりと

舞い落ちる

2011年04月13日19:59
思えば長い旅だった
いくつもの孤独と
いくつかの安らぎ

この船旅を振り返る
懐かしいあの景色
恋しいあの人の温もり

胸を焼く孤独の夜
全身に誕生を与える朝日の風

嵐の日には前も見えずに生存と戦い
凪いだ日には空と海の青に溶けた

多くの人と出会い
全ての人と別れた

今一人
水平線を眺める
風は優しく語りかける古い友人
海鳥たちはいつも他愛無い話をしてくれる
海の彼方には
置き去りにしてきたもの
そしてこれから出会うもの

かつての安らぎが孤独になっても
あの日の愛は私の目をまた開かせる
水面が光の粒を弾く度
無数の感謝が湧き上がる

なぁ聞いておくれ
思えば長い旅だった

何も気にしない海鳥は
いつものように飛び去ってゆく

光の向こうには
もう次の港が見えている

2011年04月13日22:10
さらさらと

春の流れ

桜の花びらが一枚

ピンク色の小さな点が

頼りなく流されて消えて行く

さらさらと

春の流れ

また一枚小さな花びら

私はただ心を奪われて

夢中で目で追っている

いつからここに座っているのだろう

ただその花びらをまた見たかった

ずっと桜に憧れて

小川の道を歩いてきた

川に流れる花びらに私は座り込んだ

また一枚、また一枚

なぜ歩いていたかも忘れて

ただ次の一枚を待っている

さらさらと

春の流れ

流れのままに桜の花びら

眺める私の目の前で

水の中に沈んで行った

ああそうか

私にはいつか終わりが来ると解っていた

ただそれを忘れたかった

ここで待ち続けても

いつかその桜は散ってしまう

私はただこわかった

小川に流れる花びらの美しさ

憧れた桜が

もう散っているかもしれない

その木がもう散っていたら

どこにも戻れなくなる気がした

それで私は座り込み

ただささやかな花びらを待ち続けた

待てば待つほど

余計にこわくなり

またそれを忘れようとした

さらさらと

春の流れ

また一枚花びらが迷い込む

その木からまた一枚散ったのだと

その美しさは少し痛い

私にはわかっている

憧れた桜を見たいなら

立って歩いて行くしかない

私にはわかっている

もしもその木が散っていても

季節は廻りまた桜は咲くと

さらさらと

春の流れ

美しい花びらまた一枚

夢中で目で追っている

2011年10月21日10:31
男は迷宮に生まれた

抜け出すことを夢見て

毎日歩き続ける

日々すれ違う人々は
誰かがそこから抜け出すと
出口が減ると思い込み
目を合わせることもない
出口を見たものは一人もいない

疲れきった男には何も聞こえない

ただ命を保って重い足を運んでゆく

ある時男は石をなくしたことに気がついた

彼が自分を認識した時に頭の横に転がっていた石

唯一温かさを感じたものがポケットの中にはもうない

そして迷い込んだ男は
最初の場所にたどり着くことも
もうできないことを知った

男は初めて立ち止まった

暗闇の中
ただそこに座り込んだ

彼を見る者は誰もいない

雨に打たれながら
彼は何も感じずに
暗く遅い時間を過ごした

少しだけ明るいものを見た気がした

よく目を凝らしてみると

少女が歌を歌っていた

男が初めて見る笑顔だった

暗闇の中でそこだけがぼんやりと明るかった

男は少女から目を離すことができない
何かを観ることも初めてのことだった

少女が歩くのは迷宮をでるためではなかった

時に空に手をかざしながら何かを話し

時に何もないところを見つめ

時に壁に寄り添って目を閉じる

男は吸い寄せられるように明るい方へ歩いた
少女は男に微笑んだ
男は咄嗟に尋ねる

何故ここから出ようとしないのか

少女は不思議そうな顔をして口を開ける

「私はここで生まれてここで死ぬ

この森の木々は私の家族

鳥達は大切な友達

そして私もそれ自身

私は今までもこれからもこの場所で感謝している」

男は初めて壁を見た
それは確かに木々だった

男は初めて空を見た
そこには鳥が飛んでいた

花には色というものがあり

聞こえてくる音は風

男がさまよっていたのは
美しい森だった

男は初めて感じる幸福と感謝に

ゆっくりと立ち上がり

一本の樹になった

迷う者は誰もその樹に気がつかない

迷宮に生まれた男は

その森で一本の樹になった

2011年12月31日00:46
私は何も無いところから来た

私は一面の花が太陽を映す野原から来た

私は樹々の語り合う森の奥から来た

私は砂の一粒一粒が風にのって旅をする砂漠から来た

私は暗闇の照らす海の底から来た

私はいずれそこへ戻る

そして今

私はあなたと共にここに居る

2012年01月13日10:08
彼方で生み出された光が
波や粒子としてこの場所へ
大気を衝突で鮮やかな空色に

無数の木々の葉色の点画
風の表情を運んでゆく
同じ葉などはあるはずも無く
同じ風が吹くことはない

鳥達はその優雅な体で
空間に線や点そして画を描く
そして愛をこめて歌を歌う
鳥の歌はあらゆる方向から空気を染める

海は底にあらゆる神秘を秘め
表面は全てを飲み込む海色に

時間はあらゆる物を輪にして繰り返し

風は星を瞬かせ

花は美しさを教え

雨は虹の橋を架け

月は満ちては欠けて

季節は力の距離を語り

世界は変わり続ける

そして心が幻を世界に結ぶ
私がここにいなければ
あなたがここにいなければ
全ては混沌

鼓膜が振動を音にする
あらゆる場所にあふれる光を
目が一地点へ入射する鮮やかな影にする
嗅覚があらゆる物の醸し出す破片を香りに塗り直す
味わいが繋がりを彩り
触れることで存在の動きを知る

心がそれを繋ぎ合わせ
あらゆる次元の中に
一つの世界という芸術を
描き上げる

私という世界
あなたという世界
それ以上でも
それ以下でもない
一つの世界という
一つの芸術

それら全てを忘れ去り
それをそれとして
ただ感じる世界は
限りなく美しい

2012年03月16日20:40
川って何かすごいね

どうして?

どこまでも続いてる

そう見えるくらい長いね

そうじゃないってこと?

川にも始まりと終りがあるんだよ

えー、本当に?

本当だよ

じゃあどこで終わるの?

海に行くんだよ

海はもう流れてないの?

流れてるよ

じゃあ川と一緒だね

ははは、そうかもね

川の始まりはどこにあるの?

山の上で水が地面から湧いているところだよ

その水はどこから来るの?

地下水って言う地面の中の川だよ

まだ川じゃない、それの始まりは?

雨の水だよ

じゃあ雨は空から地面の中に落ちる滝だったんだ

ははは、そうだね

雨はどこからくるの?

雲からだよ、雲は水で出来てるんだ

空の水たまり?

そうだよ

雲はどこから来るの?

海の水が空に昇っていくんだよ

ええー、海は川の終わりだったから川は空にも流れていくんだ

そうだね

川ってやっぱり何かすごいね

本当に、すごいね。

2012年07月16日03:25
私がかつて
鳥だった頃
翼を広げて彼方を見つめながら
大地と空と繋がっていた
死ぬ時にはもう一度だけ飛びたいと願った

私がかつて
樹だった頃
大地に根を張り動かずに
無数の葉を大きく広げ
あらゆる物に心を開きながら
このほしの歌を聴いていた

私がかつて
獣だった頃
太陽を畏れながら感謝して
月に孤独を癒されて
季節と実りの中で生きていた

私がかつて
魚だった頃
なにか大切な思い出を忘れているようで
何も思い出せずに
夢を見ているように
自分が水の一粒だと思って泳いでいた

私がかつて
虫だった頃
美しいものを追いかけて
飛ぶような時間の中で
物事の違いを意識せずに
命を食べて命を与えた

私がかつて
石だった頃
果てしない時の中で
あらゆる物を観て
あらゆる事を記憶して
理解と知恵の中で沈黙した

私は今
人だった頃
彼方を見て
心を開いて
畏れと感謝を胸に
夢と現実の中
命を得ては与え
理解と知恵を持って
未来を思い出して

また次の終わりまで
役目を果たして
この道を歩く

2014/7/17

夕暮れ時
雲の流れが染まり
水の揺らぎが温かく光の粒を踊らせる

心臓のリズムに
曖昧な時間と人の心が寄り添って
そこに深く音の芸術が染み込んでゆく

音と光
感じられるもの全てが
その美を思い出す瞬間

何一つ疑う事の無い
ただありのままで全てがあるところ
魂の巡ってかえるばしょ

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
色深く 音の流れに 映ゆ心


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