中東について

シリアと涙

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東京でシリアの臨時代理大使とお話しする機会をいただきました。

「世界中の美しい文化を愛するからこそ、自分の文化を大切にと思い、着物を着ています。

これからは価値観を画一化する国際化ではなく、それぞれの生き方を尊重する時代。

お互いの文化を大切にしながら、学び合う関係性を作る力になりたいと思って活動をしています」

 

そう伝えるととても共感してくださいました。

明るく、愛に溢れた素敵な女性でした。

 

「シリアには行ったことある?」

「シリアにはないけれど、隣国のヨルダンやトルコ、パレスチナ、イスラエルには行ったことがあります」

「文化も近いし似ているところがたくさんあるわ」

「たくさんのシリア人に会いました。彼らはとても苦労していましたが、シリアは美しい国だと伝えてくれました」

 

そう伝えると、とても悲しそうな顔になりました。

彼女の背負う悲しみと責任はいかほどのものでしょうか。

 

トルコで会ったシリア人のことを思い出しました。

彼はトルコで遺跡の修繕の土木作業をしていました。

しかし、トルコ人の作業員とは明らかに待遇が違います。

召使のように、気を使い、腰を低くして、威圧的な監督の言う通りに働いていました。

これは決してトルコ人が悪いという話ではありません。

人種や状況に関わらず、立場の弱い人、選択肢がない人、追い詰められている人は、

世界中で同様の苦しい立場に追いやられています。

そして、今難民として行き場を失っているシリア人は数百万人に上ります。

 

彼女は言いました。

「日本人はいつも本当に大切なことをやり遂げる。

日本を愛し、心から信頼しています」

 

その言葉は嬉しいと同時に、悔しくもあります。

以前、シリア情勢について調べていた時、幾つかの報道機関が、

シリア政府、アサド政権を武装集団と同一視するような表現をしていました。

最近、パナマ文書を報道するテレビ番組でも、

日本の識者がタックスヘイブンの問題点として、

武装勢力やアサド政権に資金、武器を援助している人々が利用していることを挙げていました。

 

これは、日本がアメリカに気を使っているからという理由が大きいでしょう。

それによって多くの人がアメリカが正義だと思っているようです、

そうすることが国益につながるという理由もあるかもしれません。

 

どちらが完全に悪く、どちらが完全に正しいということはないでしょう。

しかし、石油、パイプライン、米露関係、様々なアメリカの都合で今の中東情勢が影響を受けていることは、世界中誰の目から見ても明らかです。

歴史的背景を見れば、少なくとも、問答無用でシリア政府が悪いと取れる内容を、

日本のメディアが当然のように報道することには違和感を禁じえません。

 

何より、

「日本を愛し、心から信頼しています」

その言葉を聞いた時、日本人として涙が出そうになりました。

 

一人でも多くの方にお伝えしたいことがあります。

日本人は先人たちが世界中で素晴らしい行いを重ねてきてくれたからこそ、

今でも残っている信頼があります。

その信頼は有効に使えば平和をもたらすための最大の助けになります。

これは世界中を見てきて痛感したことです。

 

「こう考えなければならない」

ということは一切ありません。

ただ、少なくともイメージで決めつけず、

皆さんで冷静に歴史と状況を見て世界のことを自分ごとと捉えて目を向けていきたいです。

それは「人ごと」では決してありません。

世界中が繋がり、他国のことが自国の大惨事の引き金になりかねない時代です。

 

人道的

人助け

慈善行為

それだけではありません。

まさに自分の家族のように近しい人々が苦しみ、

それがきっかけで、自分の家族や自分自身が危険にさらされるかもしれないのです。

その上、日本は世界中のたくさんの人々に平和をつくることを期待されています。

 

何が正しいかではなく、

和を創るために冷静に知り、

心から行動していく。

そんな日本を、皆さんでつくっていければ幸せです。

 

このような機会をいただき、

本当にありがとうございました。

 

※写真は数年前、トルコのシリア国境

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